本

『13歳からの「集中力」向上バイブル』

ホンとの本

『13歳からの「集中力」向上バイブル』
森健次朗監修
メイツ出版
\1630+
2022.10.

 表紙に文字がたくさん並び、「本当の自分の力を引き出す本」などと心地よい文句が目立つように中央にある。「勉強に使える!」とか「一生役立つ!」とか頭に掲げてある。どうもこういうタイプの、宣伝が押しつけ気味になっているものは苦手だ。
 だが、開いていくと、驚かされた。本書の中身は、なかなか優れている。
 監修者は、本文を全部書いたわけではないが、この本に一定の責任を負っていることになる。どの程度関わるかはその本によるだろうが、専門家として目を通していることになる。この監修者は、「日本集中力育成協会代表理事」なのだそうだ。なんだか怪しい響きがあるようにすら感じるが、スポーツメンタルやリラックス法に役立つ活動をしているらしく、Eテレの「Rの法則」や「テストの花道」にも出演したことがあるらしい。ちゃんとした表向きの活動をしていると聞くと、少し安心する。
 だが、それを抜きにして本書を見たとしても、私は思わず引き込まれたことだろう。
 13歳からの、ということは、中学生から、という意味である。小学生のときと異なり、定期試験がある。計画的な学習が必要となるだろう。また、部活で疲れた中で学習するというときに、「集中力」というものが欲しいと願うニーズは、確かにあるだろう。もちろん、それが高校生になろうが、大学生、社会人、そのどこにあっても、「集中力」はひとつの憧れのような能力といえるだろう。個人としてとびきりの才能や天才的な技術というのは望めないにしても、物事に集中できたら、もっとできるだろうに、という思いは、誰もがもつであろうからだ。
 章立ては、「準備編」「自主勉強編」「授業編」「テスト・受験編」「日常生活編」「その他集中力を引き出す準備や習慣化のコツ」と展開していく。
 このようなタイプの本の中には、よく読めばきわめて当たり前のことばかりを並べ、しかも抽象的な説明や精神論しか結局なかったではないか、と思えるようなものが少なくない。そのような本への酷評も、これまで書いたことがある。しかし本書は、具体的な叙述に優れていると思う。
 たとえば、最初のところの「集中力を高める姿勢」というところでは、椅子にどのように座り、どのような動きをして、などと6段階に分けてイラストでやり方が示してある。これなら誰でもすぐに実践できるだろう。「目の疲れをとるストレッチ」や呼吸法、香り、音といったふうに五感を磨く方法が、惜しみなく提示される。
 どこにも見開きでひとつの方法が完結し、説明も簡潔でポイントのまとめもあり、右頁はイラストで具体的な対処が置かれている。
 それらのアドバイスは、一定の科学的な根拠に基づいたものが多く、最後のほうに至れば、食事の仕方や街を歩くときにもできる効果的な訓練まで触れられており、私も経験的に肯けるものにいくつも出会った。
 文の最初の5文字をゆっくり5秒かけて読んでみろ、という集中力の高め方は、私もハッとした。国語の文章を、時間が足りないからと最初に焦ってつーっと読み始める、それが実はかなり失敗の原因となることを思い出したからだ。自分も、そこまでゆっくりとは言わないが、本の最初は確かにゆっくり読むし、読み返しもする。これはやはり大切な入口となるのだ。
 暗記のコツやよそ事を考える野を防ぐ知恵、たんに勉強の方法が分からないとか、プレッシャを感じるとか、実に様々な面から、勉強に気持ちを向けていくために試してみる価値のあることを、54数えて挙げていっている。
 このタイプのもので、今まで触れた中で、私は一番これを推す。学生のために役立つ知恵が多いが、「学生の勉強」に制限する必要はないので、これはビジネスの現場で疲れた人や、何かスキルを身につけようとする人にも、なかなか面白いのではないだろうか。どうぞ書店で開いてみて、引き込まれるところがあったら、ご購入といけばよろしいのではないだろうか。居眠りしないためのちょっとしたアドバイスは、私もぜひ参考にしてみよう、と思った。




Takapan
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