本

『10代の子どもが育つ魔法の言葉』

ホンとの本

『10代の子どもが育つ魔法の言葉』
ドロシー・ロー・ノルト
レイチャル・ハリス
雨海弘美訳
PHP研究所
\1500+
2002.8.

 かつてベストセラーになったような本である。その頃も私はすでに人の親であったが、読む機会がなかった。ハウツーのように見えたのか、どうせ耳に聞こえのよいことが連ねてあるだけではないかと思ったのか、何かそういう偏見があったのかもしれない。読もうとしなかった。
 どういう風の吹き回しか、あるいは古書店で100円の値がついたのを見たせいか、素直に手が伸びたという次第である。
 実に読みやすかった。心に響いてきた。
 親として、子どもにできること、しなければならないこと、してはならないこと、それが、いくらかの経験をしてきた自分の中に、重ねられてきたのである。
 個人的な著作であるが、専門家の指示も仰いでできた本である。必ずしも思い込みで書かれたものではない。しかし、えてしてこのようなタイプの個人作は、偏った見解に向かうものである。この本でも、一定のスタンスというものかあり、その照準をぐらつかせるようなことはない。子どもを認めつつ、子どもに一定の制約を設けるなどして、子どもを導く。ただし、その親自身がまた成長していくべき存在であることを自覚するという姿勢で、現実を受け止めていく。
 子どもが親の所有物であるという感覚は微塵もない。ここが、アメリカである。この本にはわずかも出して来ないが、信仰の裏打ちにあって輝いている。子どもは神から預かったものであり、それは神の子なのだ、と。
 ただのノウハウものとして読むのも、もちろんひとつである。それで読めるようにできている。しかしまた、神のもとにある人間、そして祝福された存在としての親と子、こうした配置の中で、私たちはこの本の言葉を受け容れることもできる。私はその読み方をした。
 ひとを愛すること。イエスが与えたその命令を、自分の子という存在に向けて、どのように具体的に実践していくことができるか。そういう導きを、この本は与えてくれるのだ。
 場面はアメリカ。そこには未成年(という言い方でよいのかどうか分からないが、この本のターゲットといえる10代)の中で、アルコールありドラッグありセックスありの状況だが、それを自己本意な道徳で片付けるのでなく、どうすれば相手にいのちを与えることになるのか、そういうブレない視点が、終始貫いていた。そういう部分は、一見この日本では読みづらいかもしれないが、真実は通っている。
 よい本に出会った。ひとを愛するということはどういうことなのか、改めて教えてくれた本なのであった。




Takapan
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