本

『10歳からの 図解でわかるAI』

ホンとの本

『10歳からの 図解でわかるAI』
木脇太一監修・山口由美著
メイツ出版
\1680+
2023.8.

 マスコミは煽るように「AI」を持ち出す。認知を高めるためにはそれはよいことだ。だが、誤解や思い込みを招きがちな、こうした新技術については、センセーショナルに叫んで自社の記事に注目させようとするマスコミのやり方は、害になることが少なくない。
 そもそもこのAIの歴史そのものが、本書出版の半世紀前には、第1世代が終わっている旨、紹介されている。そして、漠然とした宣伝による印象が世間を覆い、ChatGPTが興味津々に紹介されても、それを揶揄するような発言が飛び交う中で、やれ仕事がなくなるだの、AIに人間は支配されるだの、噂ばかりが暴走する情況になっていないかどうか、心配である。
 本書は「知っておきたい人工知能のしくみと役割」という副題が付いている。言うまでもないが、AIとは「人工知能」のことである。ここには「10歳からの」と冠されているとおり、子どもに親しみやすいような形で、そのAIについての、現場の適切な解説がなされていると言える。小学4年生のタマキが、中学2年生のコウの妹として登場する。そこが10歳というターゲットを取り込む設定である。兄は、知りすぎているほどAIに詳しいが、本書の案内役として、妹の疑問に次々と答えていくようなストーリーが置かれている。
 2045年と予想されているシンギュラリティを見据えて、AIと人間との関係のターニングポイントのための準備を、2023年の時点で行うのが、本書の役割であろう。するとこの時点で10歳の人が、そのポイントにおいては32歳になっている。次代を担う力となっていることになるだろう。
 本書のスタンスは、明るいものである。もとより子どもに読んでもらいたいという趣旨を掲げている。徒に不安を煽るようなものであってよいはずがない。危険性を弁えながらも、さしあたり未来へ向けての歩みに希望をもつようにしたほうがよいだろう。それでいて、ただ夢のなんとかを植え付けるようであることに対しては、慎重であるべきだろう。全体的に明るいけれども、ここに出てこない問題点については、むしろ大人のほうが補っていく必要があるように感じた。
 身近な生活の中にすでにあるAIに気づかせた後、AIの判断のシステムについて簡単に教えてくれる。鍵になる言葉は「ディープランニング」であろう。思えば人間の脳の判断というのも、驚くべきものである。近年脳の研究が華やかであるが、このAI研究とリンクするものであることは間違いない。ただ人間の脳の場合は、どうしても生理学的なもの、あるいは生物の機能と物質の作用というものが先頭に立つことが多いが、AIの場合は認識や判断の構造が第一であり、そのためのコンピュータ制御が実現の要になってくる。脳においても、その認識や判断がどのようなメカニズムでなされているか、その探究はプログラム的にも重要である。
 情報処理能力は必要である。ビッグデータを活用しようというのであるから、機械的性能が発展しないと実用性がない。しかし現状では、それはかなり向上している。人間の脳だと、取捨選択や関連付けの点で、緩やかであると共に、幅広い結びつきを得るところが、ただ情報が多いということ以上に意味をもつ点があるだろう。AI開発においては、それをもなんとか乗り越えられないか、思案しているのではないかと思われる。たとえばユーモアのセンスについては、いまはまだ人間には及ばないことが、本書でも触れられている。機会の反応を「感情」と呼んでよいのかどうかも分からないが、「感情」と呼んでよいかもしれないレベルに、いまでは少しずつ近づいているのだとも言う。
 ちゃんとチューリングやウィーナーも紹介されているし、これまでの歴史についても分かりやすく図解してある。確かに小学生でも、興味のある子には読みやすいものだろう。全編カラーでイラスト形式になっているのもよい。そのため若干価格が高めに設定されているから、子どもの小遣いでは買いづらいかもしれない。どうか親のほうで助けてあげて戴きたい。それだけ、これからの時代を担う子どもたちには、理解してほしいことが、手際よく整理されていると思うのだ。
 ここまで発展してきたAIは、現実の生活の中にもうかなり入り込んでいる。我が家でも、呼べば応えるアレクサが、よき助け手となってくれている。今後の見通しと、注意点と、ほどよく理解していくことは、どうしても必要になっていくことだろう。せっかくその入口に来ているスマートフォンが、SNSでなければゲーム機代わりか、音楽装置か漫画本としてしか使われていないような現状では、本当にコンピュータに支配されることになりかねない。支配されることを喜びとすることが日常になることは、怖いことである。
 子どもたちには、夢を。大人たちは、少しだけ、懸念される点に気づき、警戒する心を。そうした心を養うためにも、適切な理解を皆がしたいものである。本書はそのために良い素材を提供してくれているように思う。




Takapan
ホンとの本にもどります たかぱんワイドのトップページにもどります