本

『10代からのがん予防』

ホンとの本

『10代からのがん予防』
井上正樹
NHK出版生活人新書217
\777
2007.4

 がんという病気は、まさか自分はかかるまいと誰もが思いつつ、かかるかもしれない、という不安をつねに抱いている、そんな病気である。たんに外部のウィルスということでなく、自分の一部が変化して自分を食い尽くすべく広がっていくというのだから、よけいに気味が悪い。
 かつて胃ガンが日本人の死因の多くを占めていた時代があった。それが、近年変わりつつあるということは、多くのニュースで知れ渡っている。食生活の変化が、それに関係があるとも言われるが、考えてみれば、これはたんに死因の数で見ただけである。一位であろうか二位であろうが、癌で死ぬという危険性は、一位のものを避けたところで、避けきれるものではない。胃ガンが一位ではないからと言って、塩辛いものが推奨できるというわけではないのだ。
 若年層における癌は、その細胞の活発さからいっても、進行が速いケースが多い。そして、昔はその若さではかかるのが一般的でなかった癌が、近年増えているとも聞く。
 産婦人科を専門としながらも、広く若い人々の癌に対する懸念から、著者は、10代から予防できることがあると言う。食生活もさることながら、その専門的な分野から強調されているのは、ヒト・パピローマ・ウィルス(HPV)と称されるウィルスである。つまり、癌のうちある種のものは、ウィルスにより感染するというのである。これは、性感染症の研究から分かってきたものだそうで、予防が効く分野にあるという。無防備な、あるいは無知な若者の間に蔓延していくことについて、黙ってはいらない、というところなのだろうか。
 その方面に多くのページが割かれているとはいえ、がん全般について、よき指導を与えてくれる。他人事ではない。見えないところで蝕んできて死に至らしめるというこの癌というものについて、逃げることなく、考えてみようではないか。そして、自分の生活を改善するべきである。それは、この感染症に代表されるように、まわりの人を不幸にしないためでもある。




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