本

『百年の孤独』

ホンとの本

『百年の孤独』
ガブリエル・ガルシア=マルケス
鼓直訳
新潮文庫
\1250+
2024.7.

 以前、分厚い単行本を図書館で手にしたことがあった。借りたが、2週間ではとても読めなかった。登場人物の多さと複雑さもさることながら、あまりにも異世界的な情況の中で、目まぐるしく場面が展開してゆく。心情を描くというよりは、ただ行動が次々と目の前に突きつけられてゆくような感じなので、感情移入というものができない。もちろん、大部であることが最大の理由であった。この文庫本で、注もあとがきも入れずして、625頁もあるのである。
 何が有名かというと、執筆後15年、これによりマルケスは、ノーベル文学賞を受賞したのである。そして、コロンビアからスペイン語で発信された本書は、ラテンアメリカ文学のブームを巻き起こしたという。
 マコンドという村をつくり、そこで生きる一族。その百年の歴史を辿る。人物関係は、冒頭に「家系図」が置かれている。私はそこを透明なブックカバーを開いたらいつでもすぐに見られるようにしておき、いったい何十回そこを見たかしれないという有様だった。
 注目しておくとよいのは、アウレリャノ大佐という存在と、それから家系図の最初にあるホセ・アルカディオ・ブエンディアとその妻ウルスラであろうか。特にウルスラは長命であり、かなり終わりのほうにまで登場する。この一族ではないが、メルキアデスという風来坊めいた者が、最初に登場する。そしてファンタジーめいた不思議な存在を呈してゆくのであるが、このメルキアデスという名前が度々出てくるので、注意しておくとよいのではないかと思う。
 その他登場人物を挙げればきりがない。
 楽しみを奪うであろうからいろいろ言うべきではないのだが、近親相姦とならざるを得ないような狭い社会がここにあり、その中でも女性たちの肉的な奔放さが目を惹く。そして、次々と子が生まれて育つが、果たして愛の内に生まれるということがあるのかどうか、見届けて戴きたい。
 また、国は内戦で、大佐と呼ばれる男もそこに含まれているが、血生臭い戦闘、ないし銃殺など、コロンビア内戦を描いたような筆致で、そういう場での愚かさのようなものも醸し出しているように感じられた。
 出来事は山ほどある。しかし多少の人の出入りはあるものの、この狭い家系の中で、人間は自分の欲望の他に、何を以て生きる動機とするのかどうか、分からなくなってきそうであった。
 大人のファンタジーとでも呼ぶことができようか。それとも、外へ開かれない人間の醜さを描いたお伽噺なのであろうか。文学はどのように解しても構わないと言われるが、地球という限られた世界の中で、人間はこのように、希望のないぶつかり合いをし続けているのかもしれない。果たして物語の外部から、この奇妙な一族の顛末を眺めておいてよいのであろうか。背筋が寒くなるような気がした。




Takapan
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