『0･1･2歳 頭がよくなる赤ちゃん体操・すくすく遊び』
『0･1･2歳 頭がよくなる赤ちゃん体操・すくすく遊び』
ヴァレンタイン・ドミトリーヴ
中井智恵訳
ＰＨＰ研究所
\1,470
2004.4
この本を見るかぎり、親が自分の子に対して問題を抱えているという状況は、日本だけではないものだということが分かる。著者は、ワシントン大学で研究を重ね、とくにダウン症の子とその親に力になる活動をしてきたようだ。
頭がよくなる云々というのは日本語で気を引くコピーでもあるだろうが、原題も"Smart Baby, Clever Child"となっていることからすると、たしかに子どもに知恵を与えるためのプログラムもそこにこめられていることは否定できない。
だがそれよりも私は、この本が実にしっかりした理論に裏打ちされて語られていることに感動すら覚えた。
かつては日本にも、十分な言葉による説明を連ねた育児書があった。だが今ではそれらはほとんど顧みられないものとなってしまった。今あるのは、写真と図版を多用し、表形式でマニュアルが記され、なぜそうなのかという問いを必要とすることもなく、こうならばこうせよ式の情緒的な案内ばかりである。それは何も育児書に限らないことではあるが、読者が思考するという余地がなくなってきている。思考しなくて済むように書かれた本が、良い本であり、売れる本なのである。わざわざ思考しなければならないために本を買う者は、いないようなのである。
ところがこの書は、ということはつまり例えばアメリカにおいては、読者が考えるのでなければ役立てることのできない本は、まだまだ需要があると言えるのだろうか。
この本もまた、マニュアル的な指示は多い。だが、それは背景と理論とを伝えた上でのそれであり、何よりも子どもを愛に満たされた存在として自覚させた上で知育に努めるという目的を達成させるために必要なプログラムであると見なされる。
いわば、当たり前のことが書かれているに過ぎない。だが、私たちはその当たり前のことをも見失おうとしているほどに、異常な状況に置かれていると言わざるをえない。そのあたりを自覚して、この本を利用するならば、親もまた楽しめる。なぜならば、この本には、「子どもとどうやって遊ぶか」ということがメインに書かれているように思われてならないからである。つまりは、親もまた子どもと楽しく遊ばなければならないということである。親が、子どもと遊ぶ中で癒されていくということも、あるのではないか。いや、私はそこのあたりが大きいような気がしてならない。
親のほうが育てられていくという意識が、誠実な子育てには必ずつきまとうものであるからだ。
この本は、三歳まで使える。私も買いたくなった。
た
か
ぱ
ん
ワ
イ
ド
