本

『0〜3才 脳と心を育てる本』

ホンとの本

『0〜3才 脳と心を育てる本』
主婦の友社編
主婦の友社
\1390
2004.9

 なんでもマニュアルに頼らなければならないというのは辛いことだ。人間が本来もっているであろう、自然の部分においても、逐一やり方を教わらなければできないというのは、実に情けない。しかし、説明はどこかで必要であるし、学ばなければ見えてこないというものもある。単なる経験だけではカバーしきれない部分も多々あることだろう。
 そういうわけで、子育てについても、もはやマニュアルなしではやっていけないような時代になってきた。マニュアルというものは、ある原理に立って判断して行動を起こすという目的をもつものではない。こういうときにはこうする、ああいうときにはああする、と行き当たりばったりに処置を示すものだ。その代わり、本当にその通りにすれば、確実に成果を収めることができる。
 はたして教育に、そういうことができるものか、というのは実感である。まして、知恵などの範囲に絞られない嬰児に対して、マニュアルが可能なのかどうか、それは私の中の一つの課題である。
 とはいえ、この本はいい。類書の中でも、説明の的確さや写真の分かりやすさの点で、群を抜いている。脳の発達のためということで、食事や睡眠などの点には触れられていないが、赤ちゃんは、栄養だけ与えておけば育つというものではない。食べたり寝たりしない他の多くの時間の中で、どう人間らしいふれあいを行い、感情や知性を豊かにしていくかということは、大きな問題である。
 時に誤解があるのだが、子どもを天才にしようとか、有名校に入るために頭をよくしようとかいう一心でこういう本を頼るべきではない。そうしたごく一面の知能だけを伸ばすようには仕組まれていない。親が親として育ち、子が子として育つ、極めて精神的・情緒的なところを、狙いとしていると考えなければならない。
 すると、分かる。ここに紹介されているのは、すべてをこの通りしろというふうなプログラムやマニュアルではなくて、昔から人間がやってきた、ごく自然の営みが百科的にまとめられているに過ぎない、と。そうして、自分がまた、そのようにして育てられた来たことを思い起こす契機となればいい。自分が愛されてきたことが分かったならば、自分も子どもにそれをなすことができるはずである。
 ただ、そうでないケースもあるので、それはまた別の角度から癒していかなければいけない問題となるだろう。




Takapan
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