ザカリアの賛歌に注目
チア・シード
ルカ1:67-79
ヨハネが産まれ、口が利けるようになった父ザカリアの賛歌が掲げられます。これで、イエス誕生の前段階の場面が幕を閉じます。マリアの賛歌が敵を蹴散らす力ある主を歌っているのに対して、ザカリアの言葉は、むしろ柔かです。イスラエルを憎むから自分たちは救われること、主によって救われることが歌われます。
ヨハネへの豊かな祝福の言葉が並び、「主の民に罪の赦しによる救いを知らせる」という、恵みの内にある責務が告げられています。ザカリアがこうした内容を、どうやって知ったかは分かりません。９ヶ月にわたる沈思黙考の中で、神から教えられたことなのかもしれません。あるいは、神への祈りの中からその声を聞いた、とも考えられます。
「曙の光」がそこから射し、「暗闇と死の陰に座している者たちを照ら」すことになります。こうしてイスラエルは、平和の道へと向けられるのであるというのです。福音書をルカが執筆したころのことを考えると、とても、平和で救いが期待できるというような情況ではなかったことでしょう。ザカリアはどこから幻を与えられたのでしょう。
それにしても、イエスがザカリアのエピソードを語っていたからルカはこれを書いた、というのは考えにくいものです。ヨハネの周囲にいた人からルカへと伝わってきたのでしょうか。ルカはイスラエルの敗北を現実に見ています。エルサレムは、かつてイエスが目指していた栄光の姿をとることができず、破壊されたことを知っています。
イスラエルの民が平安であるとはルカはとても思えません。その中でルカは描ききったのです。この心優しきザカリアの歌は、もっと注目されてよいと思います。罪の赦しによる救いがあるからです。私たちもまた、いまこれを伝えるべく、主を指し示して歩むのです。ヨハネは道を備えましたが、私たちはその道なるイエスを証言してゆくのです。
